私は後ろの本の開設から読む(悪い?)癖があって、この作品については解説者の方がベタほめで、アガサ・クリスティー作品の5本の指に入る傑作とまで断言されていたので、かなり期待して読み出しました。
確かにこの作品はおもしろかったです。
それは明るく、さっぱり爽快感に満ちていたというのとちょっと違う、題名にある悪魔という名のとおりのおどろおどろしい怖いイメージと、舞台背景のリゾート地の海辺の明るく青い海と空とのコントラストから発生する強力なインパクトに満ちた面白さだといえます。
季節は夏、イギリスの島のリゾート地のホテルには、あちこちから行楽客が集まっています。中年夫婦、家族連れや独身女性、牧師、元軍人等。
ある日、元女優が扼殺死体で発見されます。そして怪しいと思われる人物には、皆アリバイがあります。
たまたま休養に訪れていたエルキュール・ポアロが事件の解決に乗り出しますが、ポアロは事件の起きる前から何かが起きることを本能的に予測していたようです。
中年夫婦とのべって会話の中で、浜辺で寝そべっている人達を見て、「死体ですな、台の上にズラリと並んだ、まるで肉屋の店先みたいに!」と言って、婦人に「言葉が過ぎますよ!」と怒られても「忘れちゃいけませんよ。目の下のいたるところに悪事ありです。白昼にも悪魔はいるのです。」とか言って悪魔を信じる神経症の牧師と意気投合します。
犯人ですが、薬殺ということで最初は痴情のもつれでの男の犯行だと思われていましたが、犯行現場近くで麻薬が発見されたことで別の犯人像が浮かびあがったりします。ですが私は継子のリンダが怪しく思われました。女で子供ですが、態度が変で妙におどおどしてて、元女優のまま母を恨んでいましたし、(ネタバネになりますが)呪いの儀式で殺そうとしてたので。
だんだん犯人の予想がつかなくなってきたところで、ポアロがピクニックを提案したのですが、これも何でだろうとすごく意外でしたが、これには深い訳がありました。
謎がとけたとき、「さすがポアロ!」と思いましたね。
ポアロが中年婦人に話した言葉で「謎ときはジグソーパズルに似ています。ジグソーパズルにはめ込む一片、一片を集め、それをあるべき姿」にはめていくんですよ。」というセリフがありますが、これはそのとおりです。全然無関係にみえる事柄を1つ1つ完成形にむけて犯人、そしてその意外な共犯者を割り出していきました。
あっぱれ、ポアロ
ち蜜に計算された伏線、人々のセリフのひとつひとつに深い意味があり、そして美しい紺碧の海、真っ青な空、広大な自然の描写も満喫でき、鋭い心理描写とスリルに満ちた一冊です。
ただ一点、心に残ったのはまま子のリンダの事でした。まま母を呪い殺そうとまで思いつめ自殺までしようとしたリンダに対して実の父親はもう少し優しい言葉をかけるとか、心を配ってあげなかったのが残念でした。次の母親(となる人)には優しくしてもらって、楽しい生活を送ってもらいたいです。
この作品は1941年作、第二次世界大戦中に書かれた作品ですが、まったく戦争を感じさせないのどかで美しい風景が味わえます。
登場人物
アリーナ・マーシャル (元女優)
ケネス・マーシャル リンダ(娘)
滞在客
オーデル・Ⅽ・ガードナー 夫人
エミリー・ブルースター
バリー少佐
パトリック・レッドファン クリスチン 夫婦
ロザモンド・ダーンリー (ドレスメーカー ケネスの幼なじみ
スチーブン・レーン (牧師)
オレス・ブラッド氏
ミセスカースル レザーコム島ホテル(ジョリーロジャーホテル)のオーナー
コルゲート警部
ウェストン警視正
ニーズドン医師
2021年10.22記