この作品は1927年に発表されたアガサ・クリスティー7作目、ポアロ長編4作目、全世界を征服しようともくろむ国際犯罪組織とポアロの対決が描かれています。
解説やあとがきを見る限り、この作品の評判は決して良くないです。
中には読む価値すらない!なんて言いきっている解説者もあったりします。
私はここしばらくヘイスティングズ大尉の登場する作品を読んでなく、手元にあった本で彼の登場する作品がこのビッグ4しかなかったので、とりあえず読み進めていきました。
冒頭でヘイスティングズとポアロの再会があって、いきなり半死の男が二人の前に姿を現わし、あっという間に国際組織と対決する事態に発展し「ふんふん、なるほど」と読んでいましたが、読み進めるうちに、なんとなく違和感を覚えました。
あとで知りましたが、この作品はもともと雑誌に掲載されていた短編集を集めて一つの作品にしたらしく、二人の状況の変化が激しく、フレーズごとに登場人物も変わる為(やたら登場人物が多い訳がわかった)話にまとまりがないような感じがしました。
犯罪組織と戦っているので当然人はたくさん死にますが、ポアロとヘイスティングズも何度も命の危険にさらされます。
それどころかポアロが本当に死んでしまったので、これにはビックリ。
主人公死んだら話ここで終わるやん!
と頭のどこかで思ってはいてもスリルに走りすぎた感は否めません。
ヨーロッパ各国の首脳陣まで動員して犯人のアジトを追いつめたにしては結末があまりにあっけないし、ギリギリの瀬戸際で助けてもらった相手がロサコフ伯爵夫人とは。
最後の場面のセリフで、「引退して結婚も悪くない、、、」なんて言って、、、。
さすがにこれは、、とまあ、つっこみどころ満載の作品ですが。
全ページ通して、ポアロとヘイスティングズの厚い友情にあふれています。
そして意外な人物が2人登場します。
一人はポアロの兄アシール。もう一人がロサコフ伯爵夫人。
兄アシールの存在は「ヘラクレスの冒険」でポアロが彼の存在を明らかにしていますし、ロサコフ伯爵夫人は短編集で登場しますが、ポアロが気になる女性みたいですね。
全体的に内容は支離滅裂で、本格的推理小説ファンにはどうかと思いますが、クリスティーファンとしては初期で、家庭的に不安定な時期の作品としてこんなのもあるんだと知って損はない(多分)
あとチェスの場面が出てきますが、これはチェスの知識がないと書けないし、読んでもわからないので、その知識があるクリスティーってちょっとすごい、尊敬します。
登場人物
№1 リー・チャン・イエン(中国人)
№2 エイブ・ライランド(アメリカ人、石鹸王)
№3 マダム・オリヴィエ(フランス人、科学者)
その秘書 イエズ・ヴェロノー(実はロサコフ伯爵夫人、宝石泥棒)
№4 クロード・ダレル(元俳優)
その元恋人ミス・フロッシー・モンロー
ジョン・イングルズ 元公務員、中国通
シドニ・クラウザー イギリス内務大臣
デジカルドー フランス首相
アシール・ポアロ エルキュール・ポアロの双子の兄
ジョナサン・ホエィリー 元船乗り
その使用人 ロバート・ブラント
ジョン・ハリデー イギリス人科学者
マドモアゼル・クロード、ムッシュ・アンリ №3の助手
ピエール・コンボウ ポアロの友人
メイアリング 逃げてきた男(イギリス情報部)
アーサー・ネヴィル(ヘイスティングズの変装、№2の秘書)
アップルビー アメリカ人秘書
ミス・マーティン 速記者
ジェイムズ 従僕
ディーヴズ 従僕
ペインター 旅行家
その甥 ジェラルド アー・リン 従僕
クエンティン 医者
サヴァロノフ チェスの名人
その姪 ソーニャ・ダヴィロフ
キルモア・ウイルソン 挑戦者
2021.12.4記