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アガサ・クリスティー 読書感想文

ヘラクレスの冒険

①ネメアのライオン

  ジョージ登場

②レルネーのヒドラ

  嫉妬というものはたいていは真    実に根ざしている

③アルカディアの鹿

④エルマントスのイノシシ

  人には何かしらピンとくるものがあるのです

⑤アウゲイアス王の大牛舎

⑥スチュムパロスの鳥

  湖のほとりに住み人間の肉を常食する鉄のくちばしをもつ鳥

⑦クレタ島の雄牛

  ポセイドンに捧げられた雄牛

⑧ディオメーデスの馬

人の肉を食べる荒馬

⑨ヒッポリュテの帯

  ジャップ警部登場

⑩ゲリュオンの牛たち

  ジャップ警部登場

⑪ヘルペリスたちのリンゴ

  助手ジョージ登場

  スペインのことわざ

  欲しいものをとるがいい

  そしてその代償を払え

⑫ケルベロスの捕獲

  ロサコフ夫人、ミス.レモン登場

1947年発表の全作ポアロの短編集。

事のおこりでバートン博士と会話していたポアロは、引退してカボチャの栽培をする前にギリシャ神話のみずからのクリスチャン.ネームであるヘラクレスの難行にちなんだ象徴的な12の事件を解決することを誓います。

①掛け持ちの家の夫人の飼い犬ペキニーズの誘拐犯を独自の推理で解決するポアロ。コンパニオン役で登場するミス.カーナビー(この事件の犯人でもある)は⑩ではポアロのスパイ役を見事に演じている。

②九つの首を持っていて、一つの首を切っても首が二つはえてくる怪物

。妻を殺害したうわさを流されたオールドフィールド医師が真相をポアロに相談。若く美しい薬剤師に医師を奪われた看護婦がひ素で医師の妻を殺し、うわさを流していた。

③愛車が故障して宿に泊まるはめになったポアロはアルカディアの若い羊飼いのように美しい若者からある女性を探してほしいと頼まれる。苦労の末探しだした娘は元バレリーナで病に冒されていたが、若者と一緒になって美しい脚を持つ子供たちを作るようポアロに未来を託される。

④スイスの峡谷に来たポアロはあるホテルに凶悪殺人犯が潜伏していることをスイスの警察から知らされる。ホテルの給仕係から自分は先に潜入している刑事だと伝えられるが、彼こそが殺人犯だった。ポアロ絶対絶命のピンチを同じ観光客のアメリカ人に救われる。

⑤首相から義理の父でもある前首相の不正の後始末を頼まれたポアロ。大掃除の神話でヘラクレスが利用した川(自然の偉大な力=セックス)を利用して、マリー.アントワネットの首飾り事件をまねて夫人とそっくりの女性を使い、見事国民の同情をかうことに成功する。

⑥若い次官の男はバルカンの国で二人の美しい母娘に出会い、ひょんなことから夫殺しをもみ消す母親に加担して金を巻き上げられる。語学ができない弱みにつけこまれた世間知らずの彼は二度と騙されないよう猛勉強することを決意する。

⑦自分に狂気の血が混じっていると婚約破棄された娘がポアロを訪ねる。娘の彼は実は不義の子でそれに気づいた父が薬を使って彼を自殺させようとしていたのだった。

⑧美人4姉妹というのは嘘で、麻薬密売人が不良娘たちを自分の娘に仕立てて麻薬を売りさばいていた。彼女に恋をした医師が愛の力で救おうとする。

⑨盗まれたルーベンスの絵を取り返す依頼を受けたポアロ。

と同時期にフランスの学校に入学する途中の女学生の失踪事件が起きる。

この二つは関係あると目をつけたポアロ。女学生がみやげに持っていった絵をはがすとヒュポリュテが自分の帯をヘラクレスに渡すのを描いたルーベンスの絵が出てきた。

⑩退屈な毎日に飽き飽きしていたミス.カーナビィ。友人の入信している宗教団体に不審を抱き、ポアロのスパイとして自ら入信。ポアロと共に組織の悪をあばく。

⑪ボルジア家由来の貴重な聖杯を盗まれた美術品蒐集家が聖杯を取り戻すようポアロに依頼する。

盗んだと思われる盗賊団の由来からポアロはある人物に目星をつける。それは盗賊の娘で彼女が尼僧として入った修道院で、そこで聖杯として拝められていた。一度は取り返したが、ポアロは蒐集家にその杯を修道院に戻すよう求められる。

⑫地下鉄でヴェラ.ロサコフ伯爵夫人と20年来の再会を果たすポアロ。ロサコフ夫人は「地獄」という名のバーを経営していて、そこは麻薬の常用者のやりとりの巣となっていた。そこには冥府の番犬ケルベロスがいた。ロサコフ夫人の嫌疑をはらすポアロ。夫人の息子のフィアンセが黒幕だった。

ヘラクレス感想

物語の舞台もスイス、バルカン半島、フランスとさまざまで、内容も犬誘拐、毒殺、行方不明者探し、詐欺事件とバラエティに富んでいて飽きさせない。

ヘイスティングズ大尉が登場しない分、ポアロの魅力を充分味わえる一冊です。

ジャップ警部、ミス.レモン、助手のジョージ、そしてヴェラ.ロサコフ伯爵夫人と懐かしい人物も登場します。

殺人事件が起こらない話もあり、ポアロのロマンスも味わえて、心暖まる気分になれました。

私のイチオシは⑩

ミス.カーナビーの名演技が光ります。

あと、⑥もいいですね。人を外見だけで判断してはいけない。もっと世間(語学)を知らないと騙されるというブラックユーモアが愉快でした。

余談ですがポアロの幻の双子の兄弟アシール.ポアロの名はヘラクレスことエルキユール.ポアロにとってはほろ苦い存在だったのでしょうか。

名言(バートン博士)

人間にとって大事なのは仕事の時間じゃなくて暇な時間なんだよ、、納得

2022.1.15.記

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