この作品は1938年に発表されたエルキユール.ポアロの長編小説で唯一の密室殺人がトリックに使用されています。
題名のとおりクリスマス期間に起こった殺人事件がテーマになっているので「これは是非ともクリスマスに読もう!」と心に決めていました。話の経過が12月23日~28日の期間なので、この日付のとおりに読み進めようと思い23日から読み始めましたが24日位からがぜん話が面白くなって、結局最後は3日位で一気に読み終えてしまいましたが(笑)
クリスティの小説の殺害方法は毒殺や自殺に見せかけたピストルでの殺害が多いですが、今回はおびただしいほどのなぶり殺し。阿鼻叫喚の叫び声やら、クリスマスを彩るのにふさわしい、血なまぐさい殺害方法がなされています。
物語の出だしは列車での旅行途中のシーンで始まります。そして大きな屋敷へ皆が集まるという、お決まりのシーンです。列車で出会った男女に早くも恋の予感が感じられます。
向かった屋敷はゴーストン館。名前もクリスマス感満載。
大富豪のリー氏がクリスマスを家族で祝うべく、子供たちを呼び寄せたのですが、このじいさん、子供たちに逆にいじわるを言ってクリスマスを待たずに殺害されてしまいます。
そして当然の成り行きとして遺産争いが起こりますがこの兄弟げんかなかなか壮絶で、他人事ながら面白い。リー氏の殺害後のひと幕に使われているセリフがマクベスの
「神の挽き臼はまわるのがのろいが、どんな粒も引き逃さない(デヴィッド)」「あの年寄りがあんなにたくさんの血を持っていたと誰が考えただろう(リディア)」
このセリフが印象的です。
マクベスの劇を観た事がないので、一度観てみたいですがクリスティの作品にはたびたび演劇のセリフが出きますね(シェークスピアを生んだ国だからでしょうか。
兄弟のしっかりしていそうな二人の妻たちもポアロに言わせれば犯罪を起こす可能性はあり得るらしく、誰もが犯人でもおかしくない状況で、解決のヒントとなったのが老執事のれ言だったのが小憎らしいですし、又意外でした。
ピラールの拾った落とし物もどういう意味があるのか全くわからなかったですが、後で意味がわかってこれにもビックリでした。
ポアロはもしかした男前の警視に焼きもちやいてたんでしょうか。それもヒントになったのかな、と後で思いました。
最後は兄弟たちもそれなりに仲直りし、若い二人は新天地に向かいます。どんなに血なまぐさい事件でも、後はさわやかな気分にさせてくれるクリスティからのクリスマスプレゼントにふさわしい色どりも鮮やかな1作品です。
登場人物
場所 ゴーストン屋敷
大富豪 シメオン.リー
亡き妻アレディド
長男 アルフレッド
その妻 リディア
次男 ジョージ 国会議員41才
その妻 マグダリーン20年下
三男 デヴィッド 画家
その妻 ヒルダ
他の兄弟 ハリー
娘 ジェニファー
その夫スペイン人との子
ピラール.エストラバドス
シメオンの従僕 シドニー.オーベリー
執事 エドワード.トレッシリアン
給仕 ウォルター
シメオンの旧友エピニザー.ファー
その息子 スティーヴン.ファー
警視 ザクデン
警察部長 ジョースン大佐
2021.12.31記