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アガサ・クリスティー 読書感想文

マン島の黄金

①夢の家

②名演技

③崖っぷち

④クリスマスの冒険

⑤孤独な神さま

⑥マン島の黄金

⑦壁の中

⑧バグダッドの大櫃の謎

⑨光が消えぬ限り

⑩クイン氏のティーセット

⑪白木蓮の花

⑫愛犬の死

これは1997年に刊行されたアガサクリスティの短編集で、生前には収録されなかった初期の頃の新聞や懸賞小説全12編が収録されています。

①夢の中に出てくる家へのあこがれと恐怖を描いた幻想的な話

②有名女優の過去を知って脅しをかける男に対し、女優が機転をきかせて逆に男を退散させた、文字どおりの名演技が光るお話

③幼なじみの男性の妻の秘密を偶然知ってしまった女が、彼に言うかどうかで悩み、最後は自分も精神に異常をきたしてしまう

話に登場する牧師のセリフが鋭いナイフのように心を刺す

「誘惑を感じることなしに暮らしてきた人にもそれなりの瞬間は訪れます」

④ポアロの中編クリスマスプディングの冒険の原型で細かい描写は省略されているものの、子供たちに親しまれているポアロが新鮮

⑤小さな神様のご加護によって恋めばえる二人の姿が微笑ましい、クリスティの小説には珍しいハッピーエンドのラブストーリー

⑥マン島への観光誘致の目的で宝探しをする素人探偵の話

宝探しの解決法は私には読んでもよくわからなかったです(笑)

でもこういう小説があったとは意外でしたし、二人の探偵がトミーとタペンスを思わせてほほえましい

⑦天才画家といわれるアランには美しい妻がいるが、彼には気になる女性ジェインがいる。ジェインといると彼は無性にイライラし腹立たしくなる。その姿を見てジェインに激しい憎しみを覚える妻イザベル。男女の三角関係の心の中の葛藤を描く心理ミステリー

ホロー荘の殺人の原型

⑧省略

⑨西アフリカの蒸し暑いたばこ農園で死んだと思ってた先の夫に再会する幼妻の心の葛藤を描く

「春にして君を離れ」を思い出される舞台。でも彼女は今の夫ともう別れる気にはなれない。その彼女のセリフが切ない「光が消えぬ限り、私は忘れない。暗闇の中でも忘れない」

⑩クインとサタースウェィトが「恋人の小径」を歩いて別れた時から時を経て再会する。

クインの最後のお話、ありがとうとクインに呼びかけるサタースウェィト。感動のラストが切なさにじみ出る。

⑪逃避行の寸前で破産した夫のもとへ妻は戻るが夫は自分の保身の為その妻を道具に使う。夫の本心を知った妻は寂しく夫の元を去る。その跡にひらひらと舞い落ちた白木蓮の花びら。ファムファタール

⑫愛犬家には涙を誘う物語。でも読後感は悲しいが悲壮感がなく、むしろ晴れ晴れ。主人公ジョイスは新しい人生を歩んでいく希望に満ちたお話

物語のジャンルが多様で、初期の頃の作品ながら充分楽しめました。推理小説というよりはロマンスもの、サスペンス色が濃い感じで、これは当時のイギリスの女流作家パトリシア.ハイスミス、ダフネ.デュ.モーリアの作風を思わせます。

私のイチオシは③⑨⑩で女性の心理描写が鋭く描かれていて、ほとんど一気読みしてしまいました。

2021.12.22記

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