この作品の読みどころは大きく分けて3点あると思います。
まず登場人物がめちゃくちゃ多いです。
話の舞台が学生寮なので人物が多いのはいた仕方ないですが、後述の人物相関図を登場人物が出るごとにメモしておかないと後で確実に混乱します。アガサクリスティの話は概して登場人物が多いので有名ですが、この作品は九割が寮生なので、医者や弁護士、警察、司教、夫婦等の肩書きがありません。
それと、この事件の発端は寮内の盗難事件と物をズタズタにされた件なので、それもメモしとかないとこれも混乱します。
あと、どこの国の出身か、容姿、性格も話を理解するのに必要かも。
最初はミス.レモンのミスから始まります。完璧な仕事をするレモンがミスをするのでポアロがそれに疑問を感じ、その原因を探ろうとするストーリーが、他の作品にはないのがもう1つの読みどころです。ミス.レモンの姉が登場するのも意外な点です。
もう1つの読みどころとしては、学生寮内での犯罪なのでたいした事件じゃないだろうと軽く考えられそうですが、どうしてなかなか根の深い事件だという点です。
それからずばり言ってサイコパスの犯人が登場します。
ミス.レモンの姉、ハバード夫人は最初は学生の軽いいたずらだと思っていたようですが「これは警察を呼ぶべきです」と公言したことから話が進んでいきます。
学生たちの会話と警部、ポアロのやりとりが軽妙でテンポも早く話が進みます。
ただ実体は麻薬、宝石の密輸にからんだ根の深い犯罪で死者も3人も出てるので、このギャップにどうしても私は違和感を覚えてしまいます。
又サイコパスの息子を野放しにしていた父親も無責任ですね。
こんな状況下でも最後は1つのカップルが誕生するのはクリスティならではですね。
自分たちが遭遇した事件にくじけず明るい未来を切り開いてほしいものです。
この作品は1955年に発表され、ポアロがマザーグースの童謡を口ずさむシーンがあります。
時計が1つなり ねずみが駆けおりる
ヒッコリー ディッコリードック
軽快なリズムながらダークなサスペンスをどうぞ味わい下さいませ。あと、この作品にはマギンテイ夫人は死んだ」「ネメアのライオン」(ヘラクレスの冒険に収録)「葬儀を終えて」にからんでいるものがあるらしいのでそれも楽しみにしようと思います。
(大変な)登場人物たち
ミス.レモン(クリスチャンネーム フェリシティ) ポアロの秘書
ハバード夫人 レモンの姉、寮母
ニコレティス夫人 寮の経営者
寮生
パトリシア.レイン 考古学、眼鏡、指輪盗られる、良家の娘 30才位
ナイジェル.チャップマン 歴史学、やせ形、緑のインキ、ぼうぼうの髪
ヴァレイ.ホップハウス 服飾のバイヤー、美容院、スープの中に指輪、スカーフズタズタ ニコレティス夫人の娘
レナード.ベイトマン 医学部、大男、赤毛、父精神病、聴診器
サリ.フィンチ アメリカ人留学生、赤毛、夜会靴片方
アキボンボ 西アフリカ人留学生、呪術に興味
エリザベス.ジョンストン ジャマイカ留学生、法律、共産党、優秀、ノートに緑のインキ
ジュヌヴィエーヴ.マリュード フランス人、コンパクト他アクセサリー
ルネ.イレ
ジーン.トムリンソン 物理療法研究生
コリン.マックナブ 心理学、フランネルのズボン
シーリア.オースティン 薬剤師、ずんぐり、金髪、頭弱い、怯えている
ビグズ夫人 上の階の掃除婦
ジェロニモ コックの夫
マリア コック
チャンドラ.ラル、アハメッド.アリ トルコ留学生、ポルノ、エロ本好き
シャープ警部
コッブ その部下
エンディコット弁護士 アバーネシー事件でポアロに借りがあるらしい
2021.12.17記