この作品は、1923年に発表されたポアロが登場する長編2作目で、彼の相棒アーサー.ヘイスティングズ大尉のロマンスが描かれてます。プロローグからいきなりヘイスティングズと運命の女性シンデレラとの出会いがほほえましく描かれていて、いったんはイギリスへ戻りますが、フランスが舞台となるこの作品、フランス的なロマンチック感と悩ましい香水が匂いたつ、ミステリアスな雰囲気に包まれています。
ただ、初期の作品なため、後期の作品に比べると人物像が大ざっぱだったり、会話がぎくしゃくしてたりとか思わないでもないですけど。
例えば、落とし物の鉛管一つでも、ジロー警部が「こんなもの」と言ったものが、ポアロが「非常に大切な物」と言ってたけど、後で思ってもそんな重要な物だったの?と、いまいわからなかったり。
ストーナー秘書がもしやルノーの夫人と愛人関係か?と疑ったりしても、この秘書のキャラクターの描写がほとんど書かれてなかったり、第2の殺人被害者の男にしても、そんなにうまく急死するの?都合良すぎだわ、とか疑問に残ったのはいくつかあります。
ただポアロに敵対する(?)ジロー警部のキャラクターは単調になりがちな捜査にいいスパイスになっていましたね。
ガチガチのおれ様的な自意識過剰男で、ポアロも自意識高いですが、しょせんポアロの頭脳にはかなわなかったのが愉快。TVドラマでは最後は握手交わして友好的になっていました。
あと、女性のキャラクターは際立っていますね。
マダム.ドーブルーユはフランス悪女の典型的キャラで、その娘マルトに至ってはヘイスティングズに一目惚れさせるほどの美の持ち主。
この後シンデレラと再会しなかったら話が変わったかもしれません。
心の声
話にもありましたが、美しい女性に対する審判の目は甘いというのは現代人からするといかがなものでしょう。
女性の方がいざとなったら(恋人の為、子供の為)強いと私はおもいますが。
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今回のヘイスティングズはポアロの邪魔はするわ、捜査の秘密をもらすわ、いいとこなしでしたが、最後には生涯の伴侶を手にして、めでたしめでたし。
邪魔だてされても笑って許せる愛すべきポアロの相棒ヘイスティングズ大尉のキャラクターが味わえた一作でした。あまりゴルフ場は関係なかったですね。
TVドラマではポアロたちの泊まるホテル名がゴルフホテルで、ゴルフ三昧のヘイスティングズがバンカーで死体を見つける設定になっているのでこっちの方がゴルフ場殺人ぼいかも。
TVドラマのエンドシーンでは先に別れたポアロが、シンデレラ(ドラマでは別の名前)を連れてきて、傷心のヘイスティングズと海岸で再会するのが何ともほほえましい。パパポアロのヘイスティングズに対する愛情あふれるプレゼントでした。
登場人物
ポール.ルノー ジュヌヴィエール荘主人
エロイーズ 妻
ジャック 息子
ゲイブリエル,ストーナー ポールの秘書
マスターズ 運転手
フランソワーズ 家政婦
オーギュスト 庭師
レオニー、ドニーズ.ウラール 姉妹のメイド
マダム.ドーブルーユ マルグリット荘主人(ジャンヌ.ベロルディ)
マルト 娘
シンデレラ ダルシー.デュヴィーン ベラの妹
デュラン 医師
マルショー 巡査
べー 署長
オート 予審判事
ジロー パリ警視庁の刑事
ジョルジュ.コンノー 弁護士
名セリフ
偉大な犯罪者は時として偉大な名優でもある
2022.1.13記