この作品は1972年発表の実質的にアガサクリスティが執筆したポアロシリーズ最後の作品です。
年老いたポアロとアリアドニ.オリヴァとの会話から話が進行します。
オリヴァは出席したパーティーで、ある婦人からある事を依頼されます。自分の息子と婚約中のオリヴァの名付け子シリアの両親は彼女が幼い頃に心中自殺を遂げているが、どちらがどちらをピストルで殺したのかを調べてほしいと言います。
困ったオリヴァが友人のポアロに相談。ポアロも引き受け、真相を探るべく昔の仲間に情報を集めていきます。
オリヴァの方は昔の友人たちに話を覚えていないか訪ねてまわりますが、皆何かは覚えていても忘れていることも当然多く(特に名前に至っては)なかなか全容がつかめません。
ポアロも昔の警察仲間に相談します。その時の会話で過去にあった事件の回想シーンは次のようなものでした。
「メニューのなかでほかのところを探すようにそこにあるものを探す」
「その人たちは知らないが、その場にいた他の人からその人たちのことを聞く」(五匹の子豚)
「パーティーで女の子が殺人の現場を見たといった」(ハロウィーン.パーティ)
「あらゆる証拠が明白な事実を示している。すべて順調に片づいた。なのにあの事件はどこから見てもおかしい」(マギンティ夫人は死んだ)
昔の事件ながら、どうもすっきりしないまま過ぎ去った事件を解明する話はクリスティの他の作品にも多く出てきます。
二人の協力でようやく真相が明らかになりましたが、それはとても悲しい切ないものでした。双子とその双子両方に愛された男性との愛情物語。これも確かに一種の心中だと思います。
オリヴァとポアロの探し方の違いもありましたが、「犯罪には必ずお金がからむ」というポアロの鋭い意見は確かでした。
この作品は年代も1970年代と新しく、二人の円熟した会話から、ポアロ作品も終盤にさしかかったことが意識されました。
オリヴァの最後のセリフが何とも切なくてポアロ作品で初めて涙が出ました。
「象は忘れない。でも私たち人間は忘れることができるんですよ」
スペンス警視の母
「過去の罪は長い影をひく」
わが終わりにこそ初めはあり。わが始めにこそわが悲しき終わりはあり
登場人物
アリアドニ.オリヴァ 探偵作家
ミセス.バートン.コックス 未亡人
デズモンド バートン.コックスの養子
シリア.レイヴンズクロフト オリヴァの名付け子
ミス.リヴィングストン オリヴァの秘書
アリステア.レイヴンズクロフト シリアの父、元将軍
マーガレット シリアの母(モリー)
ドロシア.プレストングレイ マーガレットの双子の姉
スペンス 元警視
ギャロウェイ 元主任警視(当時捜査に当たってた)
ジュリア.カーステアズ オリヴァの友人
ミセス,マッチャム オリヴァの友人
ミセス.マーリーン オリヴァの友人
マディ.ルーセル(フランス人) シリアの家庭教師
ゼリー.モーウラ シリアの家庭教師
ローズンテル 美容師
ウィロビー 医師
ミスター.ゴビー 情報屋
エドワード シリアの弟
2022.2.17記