この作品は1969年発表の後期のポアロ物で、子供たちがたくさん登場し、ハロウィーンのパーティで子供が犠牲になるという、残酷でおとぎ話のような、題名どおりハロウィーンの雰囲気ただよう作品です。
田舎町である主催者の家で開かれたハロウィーンパーテイで1人の少女が「殺人現場を見た」と言い、その子がリンゴと水の入ったバケツに顔をうずめられ、溺死体となって発見されます。
パーティに出席していた女性探偵作家アリアドニ.オリヴァがポアロに捜査を依頼します。パーティの関係者たちにいつものごとく話を聞いてまわるポアロですが、老年期に入っているポアロ。頭の切れも体力も昔のような勢いがないですね。
ただ身だしなみは完璧で、ぴっちりした服装、エナメルの靴を履いてるのでオリヴァにバカにされます。一方パーティで殺人を目のあたりに目撃したオリヴァは「もう二度とリンゴなんか見たくもないし、食べたくない」と嘆いていて、気持ちがわかるだけにユーモアがあって笑わせます。
ポアロのことをコンピューターとオリヴァは言いますが、この事件ではポアロの切れのある頭脳から犯人を割り出すというよりは、ミランダや石切り荘の庭園を見たときのポアロの勘からイメージをもとに犯人像を割り出したように思われます。
絶世の美男子であるガーフィールド氏と妖精のようなミランダがよく似ている(実は親子)とかも犯人を割り出すきっかけにもなっていました。
殺しのトリックとしてはシンプルであっけないものでしたが、子供の話を聞いてすぐ殺そうと思うなんてあまりにもせっかちで単純すぎますし、実の父親が娘をいけにえにするシーン等、美に魅せられた人間の狂気と男女の愛憎劇がよく描かれていると思いました。
あと、イギリスの風土というか、庭園、植物等、自然に対する深い愛着が感じられます。そしてオペラ女という日本ではなじみのない存在が登場し、事件の鍵をにぎる存在でもあることが新鮮でした。
アリアドニ.オリヴァはポアロシリーズの中盤以降よく登場するキャラクターですが、前回読んだ「マギンティ夫人は死んだ」では話の途中でとってつけたようにリンゴと共に出現していますが、この作品では冒頭から重要な約どころとして登場しています。ポアロとのコミカルな共演が読んでいて楽しく、彼女の個性とオカルト風味に富んだハロウィーンを満喫できる一作だと思いました。
登場人物
アリアドニ.オリヴァ
ジュディス.バトラー オリヴァの友人
ミランダ ジュディスの娘
ジョイス.レノルズ ミランダの友人、13才、姉アン16才 弟レオパルド11才
ロウィーナ.ドレイク パーティの主催者、夫ヒューゴー、ルウェリンの姪
ミス.エムリン エルムズ校校長、メトウバンク校ミス.バルストロードと知り合い
ミス,ホイッティカー エルムズ校教師40才
エルスペス.マッケイ スペンスの妹(パインクレスト荘)
ルウェリン.スマイス 富豪の未亡人
フアーガソン博士 医者
ジェレミー.フラートン ドレイク家の顧問弁護士
マイケル.ガーフィールド 造園師、美男、石切り場(クオリーハウス)作った人
グドボディおばさん パーティで魔女の役
ニコラス.ランサム、デズモンド.ホランドー パーティに出席してた男の子
オルガ.セミノフ ルウェリン.スマイスのオペラ女
過去の事件
ミセス.ルウェリン.スマイス オペラ女、遺言書偽造
シャーロット.ベンフィールド
リズリー.フェリア 28才、弁護士の書記、人妻と不倫
ジャネット.ホワイト 24才、女教師、女教師ノラ.アンブローズと同居
2022,2,26記