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アガサ・クリスティー 読書感想文

死人の鏡(短編集)

①厩舎街の殺人(ミューズ)

2人の女性が同居している家で1人がピストル自殺を遂げた。不審な点があるのでジャップ警部とポアロが調査に乗り出す。

自殺した女性には婚約者がいるが、彼女の過去を知り、ゆすりをかける男が現れる。悩んだ彼女は自殺するが、ゆする男を許せない彼女の同居人は自殺を他殺に見せかけて男を逮捕させようと企てたがポアロによって見破られてしまう。婚約者の為に身を引く者とその友人の友情が切なく悲しく美しい。ポアロとジャップ警部のやりとりがほのぼのとしていて心暖まる一作。

ミス,アレン 婚約者チャールズ.レイヴァートン.ウェスト

ミス.ブレンダーリース

ユースタス少佐

②謎の盗難事件

新型爆撃機の設計明細書が盗まれた事件に呼ばれたポアロ。調べるうちにそれは行政官が過去の自分の背信行為をあばかれないためにスパイと手を組んだ偽の盗難事件だと気づく。キャリントン夫人が息子が容疑者じゃないかと勘違いしてポアロに詫びをこうが息子はただメイドといちゃついていただけだった。

殺人事件は起こらないが元技術者である行政官の苦悩がいろいろなトリックに現れていて犯人探しの謎解きがなかなか難しく読みごたえある一作。

③死人の鏡

ジャーヴァスから手紙を受け取りハムバラ荘に赴いたポアロ。到着した時には彼はピストル自殺を遂げていた。彼の傲慢な性格から自殺は考えられない。状況も不自然。養女のルースとヒューゴが結婚しないと遺産は渡さないという遺言に反して、ルースはレイクと結婚していた。犯人は意外な人物(ルースの母)だった。

短編「二度目のゴング」が基盤となっている本作品。こっちの作品の方が人物描写、ポアロの推理が光ります。血統や家柄といった古い物から個人の自由を選択するルースたち若者への時代の移り変わりが感じられます。

(余談ですが)

鏡とは、、、「鏡は横にひびわれて」にも出るセリフ

旧家にはたいてい呪いがかかっている(ヴァンダ夫人)

④砂にかかれた三角形

後の「白昼の悪魔」の原型となる作品。自分の夫がヴァレンタインと再婚したいと言うと嘆くマージョリー。だがそれは偽りで、トニーとマージョリーの2人こそが真の悪者でヴァレンタインを亡き者にしたのだとポアロは見抜く。ロードス島を舞台にした悪意に満ちた物語。1937年刊行。4作すべてポアロが主人公。中編くらいのボリュームがありどの作品もポアロの頭脳が冴え渡るおすすめの一冊です。特に④は短い作品ながら本当の悪魔が登場する絶品の一作品。

 (余談ですが)

岡目八目 第三者には当事者よりかえって物事の真相がよくわかること

2022.1.26記

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