この作品が発表されたのは1963年で比較的後期のポアロ物ですが、コリンという情報部員と彼の友人ハードキャスル警部の2人がメインで捜査し、ポアロは安楽椅子に座り、聞いた話からアドバイスするというスタイルで話が進みます。
舞台はウィルブラーム新月通りの住宅街、派遣されたタイピストがその家で死体となった男を発見します。その男は誰?誰によってどうやって運ばれたのか?そこにあった6つの時計の意味は?と、最初の設定は面白くトリッキーでした。ポアロの後期の作品には結構、意表をつく話が多いですが、この作品も例にもれず、です。途中、ポアロがコナン.ドイルやエトガー.アラン.ポー、他の有名推理作家のうんちくを語るシーンがあって、ちょっと新鮮。
ポアロの家が改装中でホテル住まいしてるポアロやタイピスト、派遣所等、時代の流れを感じます。舞台も豪邸ではなくウィルブラーム新月通りという中流の住宅地で親しみも感じられます。住民のへミングさんがイギリス的お犬様でなく猫を飼ってるのも時代なのかしら?
死体と共にあった複数の時計、絵はがきの4時13分とか謎ときとしては楽しめました。ポアロに住民の人たちといろいろな話をするようアドバイスされたコリンがその会話から事件の真相の手がかりを見つける過程が読んでいて楽しい。
コリンが自分の本職の情報府としての仕事と殺人犯の捜査を並行してるため、丁寧に読まないと話が混乱しそうでしたが最後で一気に謎が解けたのはびっくりしました。
他人と思われてた人たちが親子だったり姉妹だったりで、ポアロの人間観察はすごいと思った反面、ややこじつけかも、と思いました。
🌙マークの61Mの絵、びっくり返したら実は当のコリンが探してる人物ととっくに会っているというのも苦笑いものですね。スパイ稼業から足を洗ったコリンとシェイラのラブロマンスも芽生えて最後はハッピーエンドでよかったです。
登場人物
コリン.ラム 秘密情報部員、海洋生物学者
ベック大佐 コリンの上司
ミス.K.マーティンデイル カヴェンディッシュ秘書タイプ引受所長、砂色猫
シェイラ.ウェッブ 速記タイピスト(ローズマリー)
ミセス.ロートン シェイラの叔母
R.H.カリィ 殺された男、ハリー.キャスルトン
エドナ.ブレント タイピスト兼受付係
マーリナ.ラィヴァル(フロッシー.ギャップ)殺された男の妻と称する女
ゼラルディン アパートに住む少女
ミリセント.ペブマーシュ 身体障害施設の教師、盲目、19号
ジョサイア.ブランド 建設業者、妻ヴァレリィ、61号
ミセス.カーティン ペブマーシュの家の通いのメイド
ジェームズ.ウォーターハウス 弁護士、妹エティス、18号
ミセス.へミング(ダイアナ.ロッジ) 猫好きの老婦人(61号と背中合わせ)20号
ミセス.ラムジィ 土木技師の妻、息子ビル、テッド、62号
アンガス.マクノートン 引退した教授、園芸好き、63号
ディック.ハードキャスル クローディン警察署捜査課警部
ミセス.パッカー ウィルブラーム新月通り(クレスント)47号の住人
クェンティン.ダゲスクリン カナダ人、ハリィ.キャスルトン(殺された男)
マーティンデイルとミセス.ブランド=姉妹
ペブマーシュとシェイラ=親子
2022.4.6記