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アガサ・クリスティー 読書感想文

死が最後にやってくる

この作品は1944年に発表されたアガサクリスティ物としては異色の古代エジプトを舞台にした作品です。物語の始めのレニセンブとホリの会話「災いは内から来るものと外から来るものがある」と言ったホリの言葉から物語のこれからの予言めいたものを感じさせられました。

一族の長であるインホテプが若くて美しい愛妾ノフレトを連れて帰りました。彼女の出現でそれまで閉鎖的な社会の中で抑圧されてきたその人の本性が外に現れてきました。

それが顕著に表れたのが長男のヤーモス。父親から命令され妻からはバカにされて、おとなしかったヤーモスが父親から勘当を言い渡されると、本性が芽を出したのか、ノフレトをしめ殺し、それを見ておびえるようになった妻サティピイをも殺し、殺人狂となっていく様はえに恐ろしいものでした。

ノフレトの呪いにおびえながら実の犯人はこの中にいると知ってその影におびえながら生きていくなんて気が狂いそうになるのも無理ないです。

そんな中にあって自分を見失わず生きていこうとするレニセンブ。彼女が選んだのは昔からそばにいて彼女を見守っていたホリだったのは正解だったと思います。

一時の恋のときめきよりも長い期間一緒に時を過ごし、はぐくんできた信頼、安心感こそが今も昔も人間にとって大切なものだと、広大なナイルの川はレニセンブに最後に教えてくれたのではないでしょうか。

登場人物

インホテプ 家長、墓所守

レニセンブ インホテプの娘

ヤーモス 長男

サティピイ ヤーモスの妻

ソベク 次男

カイト ソベクの妻

ケイ レニセンブの亡き夫

テティ レニセンブの子

エサ 祖母

ホリ 管理人

ヘネット 召使い

イピィ 3男

ノフレト インホテプの愛妾

カメニ 書記

メルスー 医者

アスハイエト レニセンブたちの亡き母

農事暦

洪水季 7月下~11月下

冬季  11月下~3月下

夏季  3月下~7月下

2022.4.25記

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