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アガサ・クリスティー 読書感想文

愛の旋律

この作品は1930年に刊行されたメアリ,ウェストマコット名義の最初の作品で原題が「Giant’s Bread」(巨人の糧)といいます。

主人公ヴァーノンの幼い時からの生い立ちを従妹のジョー、友人セバスチャン、それからネルの4人との関係を主に話は進みます。ネルとジェーン、2人の女性との三角関係を描いた恋愛小説というよりは天才ヴァーノンが「巨人」という作品を完成させる過程を描いた大河小説というぐらい内容がびっしりつまっており

ボリュームもたっぷり(630ページほど)

私が読んだアガサクリスティの物では一番ページ数が多い作品です。

登場人物について言えば、父親ウォルターは典型的なイギリス紳士のイメージがあります。真面目でおだやかな性格、少々女好き。母親マイラは愛情豊かで世間知らずのお嬢様。ジョージ.チェトウィンドはどこまでも良い人。セバスチャンはユダヤ人だからでしょうか。誰とでもどんな時もブレずに世渡りできる現代人。ネルは女の見本のような女性で、ジョーは男を嫌いながらも男におぼれるツンデレ女性でジェーンは女にとって理想像のような完璧な人。

お金と愛の間で揺れるネルにはハラハラしましたが、ネルは最終的にジョージを選んで正解だったと思います。ジェーンのような生き方はあこがれても普通の何の才能のない女性には無理でしょう。

音楽の才能に目覚めたヴァーノン。記憶喪失のままグリーンとして生きた方が(凡人としてだが)幸せだったかもしれませんね。

音楽の天賦の才能を持って生まれてきたヴァーノン。けれどその才能を発揮して一大作品を世に出すまでには恋愛、生活、仕事等、幾多の苦しみに耐えねばならなかったと。そしてその苦しみこそが作品を生み出すための栄養となっていったのですね。

アガサクリスティ自身、若い頃オペラ歌手を目指すも挫折し、結婚、夫の愛人、離婚、失踪、記憶喪失そして再婚という人生を送っており、クリスティ自身がたどってきた半生の自叙伝とも思われます。

探偵小説では味わえない、古典小説のように人生のドラマが描かれた作品はメアリ.ウェストマコット作品でこそ味わえます。

読み終えた後、又プロローグに戻って再度読み返すと、更に理解が増すのは先に読んだ暗い抱擁と同様より心に残りました。

登場人物

ヴァーノン.ディア 天才音楽家、後のボリス.グローエン「巨人」製作者

セバスチャン.レヴィン ヴァーノンの親友、隣人、ディアフィールズ家

ウォルター ヴァーノンの父、アボッツ.ピュイサン所有者

マイラ ヴァーノンの母

シドニー.ベント ヴァーノンの伯父、マイラの兄、妻キャリー

ニーナ.ウェイト 叔母、ウォルターの妹

ジョー(ジョゼフィン).ウェイト ニーナの娘、ヴァーノンの従妹

ネル(エリナー).ヴェリカー ヴァーノンの幼な友達

フレミング 弁護士

ナース ミセス.パスカル

ナース.フランシス ジェーンのおば

ジョージ.チェトウィンド アメリカの富豪

ジェーン.ハーディング オペラ歌手

ボリス.アンドロフ 彫刻家、昔ジェーンと同棲

ラードマーガー 作曲家

ミスター,グリーン、ナース、神さま ヴァーノン子供時代の主要人物

プードル、スクアーラル、ツリー

ヴァーノン子供時代の友達

トムボーイ ヴァーノンの犬

ケアリ.ロッジ マイラのバーミンガム近くの新居

一言メモ

マン島の黄金収録「壁の中」

ヴァーノン、ネル、ジェーン似の3人の話

シリアルキラー 一月以上にわたって複数の殺人を犯す連続殺人犯

まやかし ブラマジェム

ペール,ギュントの登場人物 ソルヴェーグ

ニッカー.ボッカー ゴルフする時にイギリス紳士がはく裾の絞ったズボン

2022.5.16記

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