1970年、アガサクリスティ80才で書かれたこの作品は、私がクリスティの本を読む時に参考にしている「アガサの攻略本」でかなり酷評され、ネットの読書感想でも評判が悪く、ぶっちゃけ駄作扱いされて(アガサ様、申し訳ありません)いました。
ですが、アガサクリスティの作品全てを読破するのを目指す私としては読みとばす気はさらさらなく、どういうふうにつまらないかと、別の意味で期待を込めて読んでいきました。
確かに読みづらい点がいくつかありました。
まず、登場人物が多すぎる。登場人物紹介も(かなり割愛したのですが)ピンポイントでしか出ない人々、あまり重要でない人物名は省略しました。
それと大佐や政治家等たくさん出ますが一部の人を除き個性がないので記憶に残らない。
二人が空港で出会い、スタフォードを仲間に入れるとこまではわくわく感がありましたが、その後のスタフォードの活躍が全く描かれていないのが残念。
途中からは各国のお偉方たちの会話のやりとりで話がどんどん進み、どんどん話が大きくなり、いつの間にか終わっていたという感じで、その間はドキュメンタリー作品を読んでいる気がしました。その為、話の内容に感情移入することがなかったです。
ただマチルダおばとスタフォードのやりとり、マチルダおばがシャルロットばばあに会いに行ったのも、スタフォードを守るおば心の行為だったのかな、と思われた事、それからエピローグでの結婚式のやりとりのシーンにほんわか感がありました。マチルダおばにミス.マープルの面影がしのばれた感じがしました。
思うにこの本が書かれた当時のイギリスの状況を考えると、こういう本が出るのも無理はないかと思いました。
失業問題や学生運動が多発してアナーキズムが呼ばれてあちこちの途上国で革命やテロが発生している時代でしたから。
ベンヴォ計画は結局成功したのでしょうか?成功するにしてもほとんど死にかけの人が急に元気になるってのもどうかと思います。少なくとも純粋な推理小説好きの人にはおすすめできない一冊です。
ただスタフォードは魅力的なキャラクターですし、メアリ.アンもカッコいい、マチルダおばはいうに及ばずですので、この人たちの今後の活躍を想像して(笑)感想を終わりたいと思います。
登場人物
サー.スタフォード.ナイ 外交官
ゴードン.チェトウィンド スタフォードの上司
マチルダ.クレックヒートン スタフォードのおば
エミー.レザラン メイド
メアリ.アン=レナータ.ゼルコウスキ女伯爵=ミス.ダフネ.テオドファヌス
マンロー 大佐
パイカウェイ 大佐
ヘンリー,ホーシャム 保安
ブラント 提督
サー.ジョージ.パッカム 次官
ミリー.ジーン.コートマン=アメリカ大使夫人(ポケット.ヴィーナス=ジュアニータ)、夫サム(アメリカ大使)
ロビンスン
ロード.アルタムウント卿
ジェイムズ.クリーク アルタムウント卿の補佐
セドリック.レーゼンビー 英首相
シャルロッテ.クラップ(ヴァルトザウゼン女伯爵) マチルダの幼なじみ
ロバート.ショーラム 物理学者
リーザ.ノイマン ショーラムの秘書
マカラック 医者
フランツ.ヨーゼフ 若きジークフリート、ヒトラーの子?
ベンヴォ計画=人間の性格を永久に変えられる
2022.2.4記