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アガサ・クリスティー 読書感想文

殺人は容易だ

何といってもこの作品は冒頭の出だしがたまらなく小気味いいです。

退役した元警察官の主人公、イギリスに帰って来て、ロンドン行きの列車に乗り遅れたりして、ちょっとおっちょこちょい。文句を言った先のポーターに逆ギレされるわで。

列車で偶然乗りくわした(ミス.マープルを思わせる)品のいい老婦人から、村で連続殺人が起きていて、自分は目つきからその犯人を知っている。それを話しにロンドン警視庁に今から行くといって別れました。

数日後、その老婦人が車にひかれて死亡した事を新聞でルークは知り、そのまた数日後、その婦人が次はあの人が殺されると話していた医者が死亡した事を知り、さすがにこれは本当かもと、調査にのり出します。

こうなるともう今後の展開にどきどき、わくわくしないわけにいきません。

行く先の村の名はウィッチウッド.アンダーアッシュでいかにも魔女の出てきそうな所で、友人のいとこブリジェットもほうきに乗った魔女の顔みたいらしく、骨董屋の主人は黒魔術大好きでそういうミサを行っているという、オカルト味がたっぷり感じられます。あと、本のあとがきが面白く本書の理解にとても役立ちます。

なぜ主役が素人探偵でそれも男なのか?

クリスティのノンシリーズ物には若い女性が主役をはる作品が多いのですが、この作品においては主役たるルークの重大な思いちがいが犯人の予想を読者に混乱させるから面白くなるので、素人探偵だからこそ主役にふさわしい。

逆にマープルやポアロじゃ間違える訳がないでしょうし、男を主役にしたことで女性の登場人物のキャラクターが際立ってよりオカルト味が増したように思われます。

話のどこかでロマンスが芽生えるのもクリスティらしいです。

この作品は1939年作でクリスティの油ののった時期らしく、この頃には名作がどんどん発表されていたそうで、あの名作「そして誰もいなくなった」が世に出るのはこの後しばらくの時期と聞けば面白くないはずがありません。

登場人物も多いですが、それぞれ個性豊かに描かれていて、あのおなじみのバトル警視も登場して(最後のほんの少しの出番だったのが残念でしたが)仕事漬けの私のGWを楽しませてくれた一冊です。

バトル警視が少しでも登場すると話が引き締まりますね。安心して読めるというか、やはりバトル警視はすごいわ!!

登場人物

ルーク.フィッツウィリアム もと植民地駐在警察官

ジミー.ロリマー ルークの友人

ラビィニア.ピンカートン ウィッチウッド村の老婦人(ミルドレッドおば似)

ジョン.E.ハンブルビー 医学博士、娘ローズ

ブリジェット.コンウェイ ジミーのいとこ、ホイットフィールド卿の秘書

ゴードン.ホイットフィールド卿 週刊誌の経営者

アンストラザー夫人 ブリジェットの叔母

ジョフリー.トーマス ハンブルビーのパートナー

ホートン少佐 退役軍人、妻リディア、犬(ブルドッグ、ネロ、ネリ、オーガスタス)

アポット 事務弁護士

アルフレッド.ウェイク 教区牧師

エルズワージー 骨董屋の主人、黒魔術

ハリー.カーター 居酒屋主人、娘ルーシー

トミー.ピアス 村の腕白小僧

エイミー.ギブズ お手伝い、叔母チャーチ夫人

ホノリア.ウェィンフリート 図書館員

ウォンキー.プー ホノリアのペルシャ猫

ジム.ハーヴィ 自動車修理工、エイミーと婚約していた

リード 巡査

ジョウンズ 銀行の支店長

リヴァーズ ホィットフィールドの運転手

バトル警視 ロンドン警視庁の警視

2022.5.6記

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