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アガサ・クリスティー 読書感想文

未完の肖像

この作品は1934年に発表されたメアリ.ウェストマコット名義の作品です。メアリ.ウェストマコット名義の6作品のうち私が最後に読んだのがこの一冊でした。

内容としては一女性の半生を描いた小説で、特に世間を騒がすような出来事があるわけでもなく、はっきり言って退屈な、無駄に長い小説という感じが残りました。

ただこの作品はアガサ自身が母親の死、夫との離婚、失踪事件という不安定な時期を過ごした後に描かれた、自身の半生の自伝を持つ作品でもあると考えると、アガサクリスティをより深く理解するには必要な本だと言えます。

そうすると、1作品としては不出来ではあるが、アガサがどうしても描きたかった自分自身の心のうちを書くために、絵を描けなくなった肖像画家が絵筆のかわりにペンをとって1女性の半生を書いたという形でカモフラージュした形の作品だと解説者が言ってるのもうなずけます。

主人公シーリアの半生について、読みながら反感を覚えること、共感する点など幾つかありました。

まず、何一つ不自由ない子供時代。両親や祖母の愛情たっぷりに育ち、適齢期には美しく成長し、求婚相手にはこと欠かす、夜毎パーティー等で遊びまくってる、なんてうらやましくって仕方ない。ところがいざ結婚となるとダーモットのような個性的でアクの強い自分勝手でお金もない究極のダメ男を選んでしまうのです。そこが昔も今もそういう男に女は惹かれるんですね。

性格の合わない娘、お金ができ浮気する夫に対する悩みは世の母親全てに共通するものですが、それまで苦労を知らないシーリアにとってはかなりの苦痛だったのでしょう。世間知らずのシーリアにはピーターのような穏やかな男性がふさわしかったかもしれませんね。

離婚され、再婚する相手からも「いつまでも美しいままでいて下さい」と言われ、その言葉はシーリアにとっては死刑宣告のように受け、自ら生命を断とうとする彼女に、神からの使者のごとく登場した片腕の肖像画家。

彼との一夜で、それまでの自分をさらけ出し、別れる間際に彼の片腕を見たシーリア。

彼女はそこで生きる希望を見い出したのだと思います。一度踏み出していた物語を生み出す仕事に彼女が歩み出す姿が私には感じられました。

同じ女性として私も希望を持って人生を歩んでいきたいです。

登場人物

シーリア 主人公

スーザン メイド

シリル 兄

ゴールディー カナリアの名

ラウンシー(ラウンスウェル) コック

ジョン 父

ミリアム 母

ジャンヌ 小間使い

グラニー 祖母

ドーバラ 少佐

ピーター.メイトラント 外地勤務の軍人

ジム.グラント 農業青年

ジュディー シーリアの娘

デンマン ナニー

ケート メイド

2022.6.21記

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