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アガサ・クリスティー 読書感想文

カーテン

この作品は、1975年アガサクリスティの死後に発表されたエルキュール.ポアロ最後の作品です。実際に書かれたのはずっと前、第二次世界大戦の頃で、そのせいもあってか全体的に暗く寂寥感ただよう作品となっています。読書感想としては「すばらしい」の一言。あまりの作品のすばらしさに感動してしばらくは感想を文章で書くことができなかった位です。ほとぼりさめて、そうこうするうちあらすじもおぼろげになって、再読してから感想を書いた次第です。

まずは懐かしいヘイスティングズの語り口。クールで淡々とした、そして年齢を経たいぶし銀のような風情が感じられます。末娘ジュディスとのかみ合わない会話、年老いて歩くのもできなくなったポアロ。不幸を背負っている住民たち。何の明るさも見えない中、今度の殺人犯はポアロでも歯がたたない程の最強の犯罪者。

再読なので犯人を知ってから読んでましたが、そのせいかより理解ができ、初読より面白かったかも。

アラートンという男には嫌われるが女性には魅力のある男とジュディスの仲を疑い、あわや殺人を企てるヘイスティングズの姿には苦笑してしまいます。でもヘイスティングズは一番最初にノートンを犯人と当ててるのですね、確信はなくとも。

ノートンのセリフの1つ1つがフランクリン、そしてヘイスティングズの心の闇にひそむ悪魔を呼びさましていくのは本当に恐ろしいことだと実感しました。

一度覚えた殺人という麻薬に魅せられた、ある意味不幸なノートン。そして新たな被害者をこれ以上増やさない為自ら殺人者となってノートンに立ち向かうポアロ。

名探偵=殺人者という衝撃の結末には今でもショックで心がキリキリ痛んでしまいます。

そしてヘイスティングズに対する深い愛情のこもった最後の手紙は永遠に心に残るでしょう。

最後の1行「すばらしい人生だった」

私も自分の人生の終わりにはこの言葉を言えるようにこれからの人生を悔いなく歩みたいと思います。そしてポアロの作品を楽しく読んだここ数年間は実にすばらしい人生であったと今、ポアロに感謝しております。

過去の事件

事件A エザレントン(女) 夫殺害

 死因砒素、無罪、2年後睡眠薬過量で死亡

事件B ミス.シャープルズ

 姪フリーダ.クレイ世話、モルヒネで死亡も証拠不十分で不起訴

事件C エドワード.リグズ、農夫

 妻と下宿人の不義、妻殺害、自首するも放心状態にあったと語る、終身刑

事件D デリク,ブラドリー

 若い女と恋愛関係、妻青酸カリで死亡、起訴、死刑

事件E マシュー.リッチフィールド

 老人の暴君、4人の娘、ケチ、長女マーガレットに殺害される、マーガレット死亡

登場人物

ジュディス ヘイスティングズの娘

ジョージ.ラトレル スタイルズ荘の主人

デイジー ジョージの妻

ジョン.フランクリン 科学者、ジュディスの雇い主

バーバラ ジョンの妻

スティーヴン.ノートン 小鳥好き

ウィリアム.ボイド.キャリントン卿 元行政官

アラートン 遊び人

エリザベス.コール 事件Eリッチフィールド4人姉妹の1人

カーティス ポアロの今の従僕

ジョージ ポアロの元従僕

クレイヴン フランクリン夫人付きの看護婦

2022.5.19記

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