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アガサ・クリスティー 読書感想文

スリーピング.マーダー

1976年に刊行されたこの作品は、マープルシリーズ最後の作品として1943年に執筆され、アガサクリスティの死後に出版される契約となっていたものです。これも前年の作品「五匹の子豚」と同じく回想の殺人がテーマとなっています。

イングランドに到着して新居を探すグェンダ。見つけた家に彼女が感じる概視感。庭にあったはずの階段、塗りつぶされたドア、見覚えのある壁紙等にある予感を感じさせてくれます。決定的だった演劇のセリフ「女の顔をおおえ。目がくらむ、彼女は若くして死んだ」を聴いて卒倒したグェンダはその家に昔殺人があったことを確信しますが、相談したマープルに危険だから昔の事件をあばき出すのはやめろと忠告されます。が、そうはいかず2人は推理に乗り出します。

この2人の推理にオブザーバーみたいな役まわりをするマープルですが、2人の推理は若いだけあって決めつけが強くて読んでてハラハラしました。マープルは共通の友人やうわさ話や店での世間話などばばあならではの情報を仕入れる手口はお見事(これは若者にはできない)2人の男としての推理、女からの推理の違いも読んでて面白いし。

ヘレンとつながりのある3人の男のうちの1人に犯人は絞られましたが、土壇場になって猿の前足の意味がわかって推理は見事に外れましたがね。

昔住んでいた家に再び住む事になったのはヘレンの執念、運命を感じました。

この作品が執筆されたのはマープルシリーズ3作目の「動く指」の頃なのでマープルもまだ若い元気な頃で、スプレー缶持って階段をかけ上るような行動力あふれる姿が見られて嬉しかったです。

これで長編、短編合わせて全てのマープルシリーズ読破しました。

改めてマープルシリーズには花や草木、庭園といった自然の描写が多く、その中で生きる市井の人々の生活感あふれる物語だと実感しています。

ふと隣を見るとマープルが静かに座っていて人々の動きを暖かく鋭い目で見ていそうなそんな気分にさせられそうてす。最後に私なりのベスト作を挙げてみたいと思います。

マープル作品ベスト5

1 鏡は横にひび割れて。

 子を持てない女の悲しみ。     マープルの周囲の女性像が魅力的    

2 パディントン発4時50分     ルーシー.アイルズバロウ活躍。冒頭の汽車のシーンが印象的。料理も

3 ポケットにライ麦を

  怒りに燃えるマープルの姿が頼もしい

4 書斎の死体

  マープルの友人バントリー夫妻が好印象、トリックが見事 

5 動く指

 マープルの出番は少ないが兄妹のロマンスに満ちあふれている珠玉の作品

登場人物

グェンダ.リード ニュージーランドから来た新妻

ジャイルズ グェンダの夫

ヘングレーブ夫人 ヒルサイド荘の前の住人

コッカー夫人 家政婦

レイモンド.ウェスト ミス.マープルの甥

ジョーン レイモンドの妻、画家

フォスター 庭師

ケルヴィン.ハリディ グェンダの父

ヘレン.スペンラブ.ケネディ ケルヴィンの後妻

ジェィムズ.ケネディ ヘレンの兄、医師

ベンローズ 精神科医

ウォルター.フェーン 弁護士、昔ヘレンを追いかけてインドへ行った

イーディス.パジェット ハリディ家の元料理人

リリィ.キンブル ハリディ家の元小間使い、夫ジム

レオニー ハリディ家のスイス人の子守り女

リチャード.アースキン 退役少佐、色男、アンステル館、妻ジャネット

ジャッキー.アフリック 元事務員、バス会社の経営者

妻フェーン マープルと共通の友人あり

マープルの友人たち バントリー大佐、ドリー、ヘイドック

2022.4.14記

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