1924年に発表されたこの作品はアガサクリスティの長編4作目で、ポアロシリーズにも登場するレイス大佐がここでも描かれています。
この作品の魅力は何といっても底抜けに明るい主人公アンと、その脇をかためる個性豊かなサブキャラにあると思います。
父親の遺産全額はたいてアフリカ行きの船に乗り込み、途中出会う人々との交流が楽しく、話の展開もスピーディーで読んでて飽きさせません。一応殺人の謎を追うミステリーではありますが、南アフリカ航海記か旅行記読んでる気分にさせる、なんとも冒険心あふれる楽しい作品です。脇役キャラも個性派ぞろいです。
サー.ユースタス氏は後の「チムニーズ館の秘密」に登場するケイタラム卿を思わせる、部下に「よきにはからえ」と言うようなくえない人物で、悪役だけど憎めない人。
人相の悪いパジェットは意外に小心で顔に似ず?家庭的な真面目男。
ハリー.レイバーンはセックスアピール満点の二枚目男で、シューザンは愛すべきレディでアンの良き友人。堅物のイメージのあったレイス大佐はなんとアンにプロポーズしてるし。彼も生の男だったんだなと実感しました。
何かと暗い事件やロシアのウクライナとの戦争が行われている昨今、こういう明るい物語は現実を忘れさせてくれます。
結構ボリュームがあって、話が冗長かなと思う箇所もあったりはしましたが、その分長い時間楽しく読ませてもらえました。
あと、表紙のデザインが他のアガサの本と違って漫画の表紙で違和感がありました。
これはあとがき解説に書かれていましたが、漫画家の谷口ジローさんの作との事でした。
アガサクリスティの読書感想を書き始めて一旦今回で1つの区切りとします。
とりあえず、戯曲集の何冊かを除いて全作読破しての感想と言えば、やっぱりクリスティの作品は面白いです。
読み始めた最初の頃の作品の感想は書いてないですが、時間ができたら少しずつ読み直して感想も書いてみたいと思います。
つたない文章でもここまで読んで下さってありがとうございます。
登場人物
アン.ベディングフェルド 女流冒険家、父旧石器時代研究者
マダム.ナーディナ ロシア人舞踏家
大佐 犯罪組織の首領
フレミング氏 父の弁護士
セルギウス.パヴロヴィッチ伯爵 ナーディナの知り合い
ネズビー卿 【デイリー.パジェット】新聞社主
サー.ユースタス.ぺドラー ミル.ハウスの所有者、下院議員
L.B.カートン 地下鉄で死んだ男
キャロライン.ジェームズ夫人 ミル.ハウスの管理人、ユースタスの料理人、夫は庭師
デ.カスティーナ夫人 ミル.ハウスデ殺された婦人の名
メドウズ警部 捜査課
ガイ.パジェット ユースタスの秘書
オーガスタス.ミルレイ ユースタスの友人
ジャーヴィス ユースタスの執事
ハリー.レイバーン ユースタスの新しい秘書
(シューザン)クラレンス.ブイア令夫人 社交界の花形
エドワード.チチェスター師 宣教師
リーヴズ 労働党員
サー.ローレンス,アーズリー 南アフリカ鉱山王
レイス大佐 アーズリーの近親者、諜報局員
ジョン.アーズリー ダイヤ見つけた二人、サー.ローレンスの息子
ハリー.ルーカス ダイヤ見つけた二人
キルモーデン.キャッスル 南アフリカへの航海船
谷口ジロー 孤独のグルメ、坊っちゃんの作の漫画家
2022.7.10記