- 中年婦人の事件
- 退屈している軍人の事件
- 困りはてた婦人の事件
- 不満な夫の事件
- サラリーマンの事件
- 大金持ちの夫人の事件
- あなたは欲しいものをすべて手にいれましたか?
- バグダッドの門
- シーラーズにある家
- 高価な真珠
- ナイル川の殺人
- デルファイの神託
短編12作で構成されるこの作品は、事務所でパイン氏自身は動かず、彼のスタッフに指示をして問題を解決する「事務所編」とパイン氏が中東へ旅行に出、旅の途中で出くわす事件を解決する「旅行編」に分かれています。
どちらがおもしろいかと聞かれると、どちらも味わい深い作品ですが、パイン氏の統計的能力が発揮されているのは「事務所編」だと思います。
とにかく7話ともおもしろい。
それぞれに悩みを持つ依頼者がパイン氏の見事な統計学に裏打ちされた頭脳と、彼のスタッフ達の名演技によって悩みが解決され、生きる喜びを見つけていく過程がほほえましいです。
7話目でパイン氏が列車に乗り旅に出て、そこから中近東への異国情趣あふれる「旅行編」
へと場面が移ります。
旅先でパイン氏はいくつかの事件(殺人もあり)にまきこまれ、持ち前の統計的頭脳を使って解決していきます。
この旅行の話は後々ポアロが活躍する「ナイルに死す」や「メソポタミヤの殺人」に繋がっていく伏線なのでしょうか?
この後、パイン氏は表舞台には登場しません。ポアロに主役の座をバトンタッチして自身は優雅に余生を過ごしたというかお役御免となったのか、、、
ここで1つの疑問が生まれます。
「どうしてパイン氏は途中、旅に出たのか?
悩み相談を受けて、人間の永遠に満ちることのない欲望に触れ続けていくのにパイン氏はきっと疲れたんじゃないかと私は思います。
老年にさしかかったパイン氏は仕事を離れ、壮大な大地にふれたくなって出た旅先でも、持ち前の統計的頭脳は彼を事件から離してはくれません。(最後の話、デルファイの神託参照)
詠み終わった後、私には中近東の遺跡の中で、こうこうと光るオレンジ色の、今にも沈もうとする太陽を眺めているパイン氏の姿が目に浮かびます。
アガサ・クリスティーの作品の主人公中、最も出番の少なかったパイン氏ですが、彼の存在は、いぶし銀のような魅力をたたえています。
私自身も自分が悩みをかかえていたら、パイン氏に相談してみたかったです(もっとも高い相談料
はお支払いできないですがね)
2021年9.20記
「パーカーパイン登場」への1件の返信
自分もパイン氏が旅に出たのは解決出来る能力が高くてもいつも頼られ続けるのも疲れてしまったのかなって思いますね
とはいえ旅先でも事件が起きるのはメタ的な理由はともかく宿命なのかもしれませんね