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アガサ・クリスティー 読書感想文

魔術の殺人

この作品は1954年に刊行されたミス.マープルシリーズ第5作目です。

ずばり言ってしまえばクリスティ版(日本の横溝正史)です。

まず家族構成が複雑。家系図書かないと誰が誰だかわかりやしないし、冒頭から友人に「妹が何だかわからないけど心配だからマープルお願い。!」とお願いされるところから怪しげな気配がただよいます。(っていうか心配だったら自分が行けよ❗)

妹のところには隣に少年院があるし、精神不安定な使用人はいてるし、ひねくれた実の娘に、いじけた孫の婿、その他の人物が入れ代わり立ち代わり新参者のマープルに自分の愚痴、不満をぶちまけてきます。

この会話のやりとりから、私たち読者はこの人がどういう性格でどういう感情を持っているかがわかります。

よっぽどこの人たち、日頃からうっぷんたまってるんだな、見も知らないマープルにそこまで本音言う❓️

まあそれもマープルの人徳でしょう。ついでに名前も似てるし、姉さんはルーズ、妹はルイズ、妹の今の夫はルイスだし、、、、

そしてある日、姉さんの心配したとおりの事件が起こります。

銃声が聞こえたのと別の部屋で義理の息子が殺されます。

そして妹のグラスには毒が入っていました。毒を入れたのは誰?何故別の部屋で殺人が起きたのか?

それには魔術(トリック)が使われたのですがそれを解明するのにマープルの鋭い目が光ります。

やっぱりマープルすごい!

ただ、この作品のトリックはタネあかしを知ってしまえば「なあんだ」

と思ってしまうようなものです(マジックショーもそうですよね)

それよりもこの作品のみどころとしては複雑な人間関係の中での妬み、ひがみ、そして深い愛情が描かれています。

特に最後のエドガーを助けようとして命を亡くしたルイス親子?、寄り添うキャリーと娘のミルドレッドの姿に感動しました。

三度の食事にも事欠く貧乏人として心安く友人の頼み事をきくマープルの心の広さが、こうしたほんわかした結末を迎えさせてくれたのかもです。

この作品は突っ込みどころ多くて楽しませてくれました。

それにしても女心って怖い(笑)

登場人物

姉 ルーズ.ヴァン.ライドック夫人

 マープルの幼なじみ

妹 キャリー.ルイズ.セロコールド

ジュリエット.ベルエヴァー

 キャリーの付き添い

ルイス.セロコールド

 キャリーの現在の夫

 ストニィゲイト住まい

エドガー.ローソン

 ルイスの使用人

エリック.グルブランドセン

 キャリーの最初の夫

 3人の息子あり

ピパ

キャリーとエリックの養女

ピパの夫

 グイドウ.サン.セヴェリア侯

 イタリア人

ジーナ

 ピパと侯爵の娘

ジーナの夫

 ウォルター.ヘッド

ミルドレッド

 キャリーとエリックの実の娘

ストレット

 ミルドレッドの夫

 大聖堂参事

ジョニー.リスタリック

 キャリーの2番目の夫

息子二人あり

 アレックス、スティーヴン

カリー警部

レイク部長刑事

2021,11.22記

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鏡は横にひび割れて

この作品は、1962年マープルシリーズ8作目で、マープルの住むセント.メアリ.ミード村が舞台です。

1980年にエリザベス.テーラー主役の「クリスタル殺人事件」として映画化されたこの作品は、彼女の稀代の美貌、個性ある周囲のキャラクター、マープルのホームグラウンドが舞台とあって、華やかさと同時にほのぼのとした魅力にあふれています。

セント.メアリ.ミード村も時代の変化を受けて新興住宅地がたくさんでき、新しい住民も増えてきました。

マープルの友人、バントリー夫人のかつての住居であったゴシントンホールに有名女優が引っ越してきて、開かれたパーティーで一人の女性客が毒の入ったカクテルを飲み、死んでしまいます。

誰が毒を入れたのか、そして何の為に殺したのか?

ホワィダニットのこの事件、最初しばらくは新しい住人たちも交えて、ホームドラマのようなやりとりがしばらく続きます。

マープルは付き添い婦のミス.ナイト

からすっかり体の弱ったおばあちゃん扱い。うまくナイトの目を逃れて散歩に出かけたら、今度は転んでヘザー.バドコックに助け出される始末。

マープルも今回は犯人の目星がなかなかつかず、適当な病名を言ってのけるバントリー夫人にブチ切れてたりします(笑)

犯人とその殺しの手段は意外とあっさりとしたものでしたが、その動機は心の凍りつくような冷たい、寂しいものでした。

ヘザー.バドコックは人のいい、自ら野戦に奉公するような正義感にあふれた真っ直ぐな人だったのですが、悪くいうと相手の事を考えない、今で言うところの空気の読めない人だったんですね。バドコックはそのせいで自ら墓穴を掘って殺害されるはめになったのですが、瞬時に殺意を覚え、そして殺してしまったマリーナも憐れでなりません。

この作品からは主役女優の美しさ、そして母性の悲しみがひしひしと伝わります。

そして登場人物たちのやりとりが丁寧にゆっくり描かれていて、とても読みやすかったです。

登場人物は多いですが意外にも混乱せずサクサク読めました。

あとシャーロット姫のオペラ「ああ、呪いは我が身に、シャーロット姫は叫べり」なんていうセリフがすらすらと言えるバントリー夫人に

イギリス上流階級の女性の教養の高さにもほれぼれしました。女性の方に愛される作品です。

登場人物

ドリー.バントリー マープルの友人

   ゴシントンホールの元持ち主

ミス.ナイト  マープルの付き添い

チェリー.ベイカー  メイド

ジム   チェリーの夫

グラディス.ディクスン  チェリーの友人

マリーナ.グレッグ 女優

ジェースン.ラッド マリーナの夫

       映画監督

エラ.ジーリンスキー ジェースンの秘書

ヘイリー.プレストン ジェースンの助手

ヘザー.バドコック  野戦病院協会幹事

アーサー  ヘザーの夫

マリーナの友人たち

 アードウィック.フェン

 ローラ.ブルースター

 マーゴット.ベンス

マリーナの主治医

モーリス.ギルクリスト

ゴシントンホール召使い頭

 ジュゼッペ

警部

フランク.コーニッシュ

主任警部(スコットランドヤード)

ダーモット.クラドック

小さい頃からのマープルの知り合い

部長刑事

ウィリアム.ティドラー

風疹

妊娠初期にかかると胎児の耳、目、心臓、知能等に障害が起きやすい

2021.10.24記

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黄色いアイリス

収録作品9(短編集初版1939年)

  1. レガッタ.デーの事件 P.パイン
  2. バグダッドの大櫃の謎 ポアロ
  3. あなたの庭はどんな庭ポアロ
  4. ポリエンサ海岸の事 P.パイン
  5. 黄色いアイリス
  6. ミス.マープルの思い出話
  7. 仄暗い鐘の中に ノンシリーズ
  8. 船上の怪事件   ポアロ
  9. 二度目のゴング  ポアロ

この短編集を読んだきっかけは、先に「パーカーパイン」を読んでとても面白く、他にパインの登場する話が他に2話だけで、その二話がこれに収録されていることを知ったからです。

短編にはのちに長編作品の原型となるものもあり、逆に長編を読んでて、「あれ、この話何か読んだことあるわ」と思うこととかあって、この中の収録作品にもそういうのがいくつかあります。

私が今まで読んだ中では「バグダッドの大櫃の謎」

これは中編「スペイン櫃の秘密」のほぼ原型ですし、「船上の怪事件」は長編の名作「ナイルに死す」を思い出されます。

それ以外にも(私は未読ですが)「二度目のゴング」は「死人の鏡」と似ているらしいし、題名の「黄色いアイリス」は「忘られぬ死」としてのちに長編化されています。

短編を短い時間で読めるから読むだけでなく、クリスティファンとしてはその筋書きをたどりながら読むと、他の作品を読んだときに新たな気付きがあるかもしれませんね。

この短編集はポアロもの5作、マープルもの1作、パインもの2作、他1作の計9作が収められていて、各名探偵たちのキャラクターを味わえる、とても豪華な短編集だと思います。

私のイチオシとしては「ポリエンサ海岸の事件」。女心を見事に

つかんだ名作です。

そして脇役マドリーン.ド.サラの名演技が光ります。これを読まれると、女性はなるほどと納得され、男性は女心を認識するかも。

あと短い話ですが「ミス.マープルの思い出話」マープルの人情味ある人柄を味わえる珠玉の作品、なんともいえぬ昔への懐かしさが読後ただよってきます。

「バグダッドの大櫃の謎」「黄色いアイリス」「二度目のゴング」については別の作品で又違った味わいを楽しみに待っていたい、そう思います。

2021.11.8記

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白昼の悪魔

私は後ろの本の開設から読む(悪い?)癖があって、この作品については解説者の方がベタほめで、アガサ・クリスティー作品の5本の指に入る傑作とまで断言されていたので、かなり期待して読み出しました。

確かにこの作品はおもしろかったです。

それは明るく、さっぱり爽快感に満ちていたというのとちょっと違う、題名にある悪魔という名のとおりのおどろおどろしい怖いイメージと、舞台背景のリゾート地の海辺の明るく青い海と空とのコントラストから発生する強力なインパクトに満ちた面白さだといえます。

季節は夏、イギリスの島のリゾート地のホテルには、あちこちから行楽客が集まっています。中年夫婦、家族連れや独身女性、牧師、元軍人等。

ある日、元女優が扼殺死体で発見されます。そして怪しいと思われる人物には、皆アリバイがあります。

たまたま休養に訪れていたエルキュール・ポアロが事件の解決に乗り出しますが、ポアロは事件の起きる前から何かが起きることを本能的に予測していたようです。

中年夫婦とのべって会話の中で、浜辺で寝そべっている人達を見て、「死体ですな、台の上にズラリと並んだ、まるで肉屋の店先みたいに!」と言って、婦人に「言葉が過ぎますよ!」と怒られても「忘れちゃいけませんよ。目の下のいたるところに悪事ありです。白昼にも悪魔はいるのです。」とか言って悪魔を信じる神経症の牧師と意気投合します。

犯人ですが、薬殺ということで最初は痴情のもつれでの男の犯行だと思われていましたが、犯行現場近くで麻薬が発見されたことで別の犯人像が浮かびあがったりします。ですが私は継子のリンダが怪しく思われました。女で子供ですが、態度が変で妙におどおどしてて、元女優のまま母を恨んでいましたし、(ネタバネになりますが)呪いの儀式で殺そうとしてたので。

だんだん犯人の予想がつかなくなってきたところで、ポアロがピクニックを提案したのですが、これも何でだろうとすごく意外でしたが、これには深い訳がありました。

謎がとけたとき、「さすがポアロ!」と思いましたね。

ポアロが中年婦人に話した言葉で「謎ときはジグソーパズルに似ています。ジグソーパズルにはめ込む一片、一片を集め、それをあるべき姿」にはめていくんですよ。」というセリフがありますが、これはそのとおりです。全然無関係にみえる事柄を1つ1つ完成形にむけて犯人、そしてその意外な共犯者を割り出していきました。

あっぱれ、ポアロ

ち蜜に計算された伏線、人々のセリフのひとつひとつに深い意味があり、そして美しい紺碧の海、真っ青な空、広大な自然の描写も満喫でき、鋭い心理描写とスリルに満ちた一冊です。

ただ一点、心に残ったのはまま子のリンダの事でした。まま母を呪い殺そうとまで思いつめ自殺までしようとしたリンダに対して実の父親はもう少し優しい言葉をかけるとか、心を配ってあげなかったのが残念でした。次の母親(となる人)には優しくしてもらって、楽しい生活を送ってもらいたいです。

この作品は1941年作、第二次世界大戦中に書かれた作品ですが、まったく戦争を感じさせないのどかで美しい風景が味わえます。

登場人物

アリーナ・マーシャル (元女優)

ケネス・マーシャル   リンダ(娘)

滞在客

オーデル・Ⅽ・ガードナー 夫人

エミリー・ブルースター

バリー少佐

パトリック・レッドファン  クリスチン 夫婦

ロザモンド・ダーンリー (ドレスメーカー ケネスの幼なじみ

スチーブン・レーン (牧師)

オレス・ブラッド氏

ミセスカースル レザーコム島ホテル(ジョリーロジャーホテル)のオーナー

コルゲート警部 

ウェストン警視正

ニーズドン医師

2021年10.22記

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メソポタミアの殺人 (ネタバネあり)

この作品は、1936年発表の中近東シリーズ長編第1作で、名探偵エルキュール・ポアロが登場します。

考古学者エリック・ライドナーの妻ルイーズの付き添い役の看護婦エイミー・レザランが事件後に回想して書く形式をとっており、ご存じの方は「アクロイド殺し」を思い出されるかもしれません。

私ももしかして「あら、これは、、、、」と思いました。実際の犯人は違いますが。

遺跡発掘調査の一団である殺人事件がおこりました。それは完全な密室殺人です。そこへたまたまシリアからバグダッドへ旅行中だったポアロが地元警察に要請され事件の謎を解き明かそうとします。

私個人の感想としては、この密室殺人のトリックはかなり無理があると感じました。上から物を投げて、それで人間の頭を致命傷にし、その石を再び上に戻すなんて、よほどの名手でないと無理でしょうし、そもそも前の夫が今の夫と同一人物なんて夫婦してたら絶対わかるやろ!

それと書き手エイミーのポアロに対する評価がボロクソで、何かで読んだのですが、アガサ自身ポアロをあまり好いていなかったが、周りの者がポアロを主人公にした話をと希望するので、これだけの数の作品が生まれたとかで、ポアロファンにとっては複雑な気分です。

いろいろ難点はありますが、1930年にマックス・マローワンと再婚したアガサ・クリスティーがメソポタミアを背景にした作品ということで考古学、古代文化へのロマンを味わいたい人にはその背景でのミステリーとして楽しめる作品です。私も好きです。出た地名を地図で探して、ちょっとした机上の旅行をしている気分でいられました。

あと、ルイーズの妖婦を思わせる美しさ、それに惚れてしまう男たち、嫉妬心に燃える女性たちの心情がよく描かれていて最後まで誰が犯人かわからない、また誰もが犯人になり得るストーリーが楽しめたミステリーです。

登場人物

ライリー医師  -シーラ・ライリー(娘)

エイミー・レザラン(看護婦)この作品の書き手

エリック・ライドナー  ルイーズ・ライドナー  夫婦

ヤリミア遺跡調査員

リチャード・ケアリー (外国人建築家、美男、ルイーズと恋仲)

ラヴィニ神父 (フランス人神父)

ミス・ジョンソン (イギリス人、ライドナー博士を慕う)

マリー・マーカド ジョゼフ・マーカド (夫婦)

カール・ライター

デビッド・エモット

ウイリアム・コールマン

2021年10.15記

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パーカーパイン登場

  1. 中年婦人の事件
  2. 退屈している軍人の事件
  3. 困りはてた婦人の事件
  4. 不満な夫の事件
  5. サラリーマンの事件
  6. 大金持ちの夫人の事件
  7. あなたは欲しいものをすべて手にいれましたか?
  8. バグダッドの門
  9. シーラーズにある家
  10. 高価な真珠
  11. ナイル川の殺人
  12. デルファイの神託

短編12作で構成されるこの作品は、事務所でパイン氏自身は動かず、彼のスタッフに指示をして問題を解決する「事務所編」とパイン氏が中東へ旅行に出、旅の途中で出くわす事件を解決する「旅行編」に分かれています。

どちらがおもしろいかと聞かれると、どちらも味わい深い作品ですが、パイン氏の統計的能力が発揮されているのは「事務所編」だと思います。

とにかく7話ともおもしろい。

それぞれに悩みを持つ依頼者がパイン氏の見事な統計学に裏打ちされた頭脳と、彼のスタッフ達の名演技によって悩みが解決され、生きる喜びを見つけていく過程がほほえましいです。

7話目でパイン氏が列車に乗り旅に出て、そこから中近東への異国情趣あふれる「旅行編」

へと場面が移ります。

旅先でパイン氏はいくつかの事件(殺人もあり)にまきこまれ、持ち前の統計的頭脳を使って解決していきます。

この旅行の話は後々ポアロが活躍する「ナイルに死す」や「メソポタミヤの殺人」に繋がっていく伏線なのでしょうか?

この後、パイン氏は表舞台には登場しません。ポアロに主役の座をバトンタッチして自身は優雅に余生を過ごしたというかお役御免となったのか、、、

ここで1つの疑問が生まれます。

「どうしてパイン氏は途中、旅に出たのか?

悩み相談を受けて、人間の永遠に満ちることのない欲望に触れ続けていくのにパイン氏はきっと疲れたんじゃないかと私は思います。

老年にさしかかったパイン氏は仕事を離れ、壮大な大地にふれたくなって出た旅先でも、持ち前の統計的頭脳は彼を事件から離してはくれません。(最後の話、デルファイの神託参照)

詠み終わった後、私には中近東の遺跡の中で、こうこうと光るオレンジ色の、今にも沈もうとする太陽を眺めているパイン氏の姿が目に浮かびます。

アガサ・クリスティーの作品の主人公中、最も出番の少なかったパイン氏ですが、彼の存在は、いぶし銀のような魅力をたたえています。

私自身も自分が悩みをかかえていたら、パイン氏に相談してみたかったです(もっとも高い相談料

はお支払いできないですがね)

2021年9.20記

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愛の探偵たち短篇集

  1. 三匹の盲目のねずみ     ノン・シリーズ
  2. 奇妙な冗談          マープル
  3. 昔ながらの殺人事件       マープル
  4. 申しぶんのないメイド      マープル
  5. 管理人事件          マープル
  6. 四階のフラット          ポアロ
  7. ジョニー・ウエイバリーの冒険   ポアロ
  8. 愛の探偵たち         ハーリ・クイン

アガサ・クリスティーの本は100冊以上あり、まだ未読のものも多いのですが

(2021年9月現在25冊目)私の読む順としては長編小説の後に手軽に読める短編小説をはさむ事が多いです。

なかでもこの短編集は、例えばお昼休みや電車の移動中、寝る前にお茶を飲みながら、ゆったりとした

気分で読める本です。

全8作収められていて、1作目は130ページほどありますが、他は数十ページと短いものですが、

中身は長編ものに負けず劣らずの粒もの揃い。

おなじみの名探偵マープル物4作、ポアロ物策、そして短編のみ登場するハーリ・クイン物1作、

ノン・シリーズ物1作の構成ですが、脇役としてヘイスティングズ大尉、メルチェット署長もしっかり登場します。

特に1つあげるとすれば最初の「三匹の盲目ねずみ」を押したいです。

この作品は1947年にクリスティーが執筆したラジオドラマ「ねずみとり」を小説化したもので

現在世界で最も長く上演されている演劇らしいです。

寒い季節、クリスマスやお正月とかに読んでみたくなります。

登場人物全員が怪しくて、最後まで犯人の見当がつきまでんでした。

⑤の管理人事件は「終わりなき夜に生れつく」につながるシーンがあり「あっ、これどこかにあったな」と思わせてくれます。

私自身、先に読んだのが「終わりなき夜に夜に生れつく」でオカルト的気分にひたされたときだったので、次はちょっと気楽に読みたいなと思ってこの本をチョイスしましたが、これは大正解でした。

どの作品も短編ながらしっかり謎解き要素があって読者をはらはらさせます。最後、犯人がわかると「なーるほど」と期待を裏切りません。

名探偵たちの魅力が詰まった、いつでも持ち歩いて読んでみたくなるアソートチョコレートみたいな短編集,是非味わってみませんか?

 2021年9.10記

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ノンシリーズ終わりなき夜に生れつく

アガサ・クリスティーの小説の中では異色の、語り手が僕(若い男性)

で進められる物語で「エッ!」って感じで読み始めました。

この男性、アルベール・カミュの作品「異邦人」の主人公ムルソーや

アンソニー・バージェスの作品「時計じかけのオレンジ」の主人公

アレックスを思わせる、基本ワルで超実存主義、世の中をなめていて(現代にもいますが)俺様が地球を回していると思ってるような男です。

ある時、ジプシーが丘という、地名からしてオカルト感ただようところで

エリーという女性に出会い、恋におちます。

その女性、実は大富豪の娘で、身分違いながらも周囲をうまくまるめこみ

2人は結婚にこぎつくという話がしばらく続きます。

この辺はちょっと退屈、つまらないなあ(よくある世間知らずのお嬢さんが悪い男に

たぶらかされて、そのうち殺されるんでしょうね、クリスティーの小説なんだから

さ!)と思いながら、このあたりで私の悪いなのですが、あとがきを読んでしまったのです。

そのあとがきに最後の30ページほどにとんでもないどんでん返しがあった、、、と書いてあったので